請求業務のご相談を受けるなかで、今でも「Excelやスプレッドシートで管理している」という会社にはたくさん出会います。
私はそれを、決して悪いことだとは思っていません。むしろ、ビジネスの立ち上げ初期は「まずはExcelで十分」とすら思っています。
誰でもすぐに触れて、コストもかからない。実際、私自身も起業したばかりの頃は「これならExcelで事足りるだろう」と考えていました。最初の一歩を支えるツールとして、これほどよくできたものは他にありません。
しかし、いざ「業務改善」の話になると、世間では判で押したように「そろそろExcelをやめましょう」という流れになりがちです。
気持ちはよく分かります。ただ、Excelをやめること自体が目的化してしまうと、そのプロジェクトはたいていうまくいきません。なぜなら、本当に大切なのは「ツールを捨てること」ではなく、「目の前の業務が淀みなく回ること」だからです。
取引先が数社程度で、単発の案件がメインであれば、Excelで困ることは何一つありません。
本当の意味で困り始めるのは、皮肉にも事業が軌道に乗り、毎月安定して請求書を発行できるようになってからです。
たとえば、請求書の保存方法ひとつをとってもそうです。
「取引先ごとにフォルダを分けるか」「年月ごとに分けるか」。良かれと思って両方で細かく分類しようとした結果、数ヶ月後には「検索してもお目当てのファイルがすぐに出てこない」という迷宮に迷い込みます。
シートを月ごとに増やしていく運用もよく見かけます。「1月、2月、3月……」とタブが横に伸びていき、年が変わればファイルをコピーして新年度版を作る。気づけばデスクトップや共有サーバーに似たような名前のファイルがズラリと並び、「どれが最新の正解データだっけ?」と、社内の誰も即答できなくなる。
これ、本当に多くの現場で起こっているリアルな日常です。
面白いのは、こうした請求書づくりを少し効率化できたとしても、そこで終わりにはならないということです。人間、作業が楽になると、必ず次の要望が湧き出てきます。
最初は単に「請求書を発行すること」だけが目的だったはずなのに、いつの間にか「経営判断のための情報」を求めるようになっているのです。
作るのが楽になれば分析したくなり、分析できれば集計したくなり、集計できれば未来の予測がしたくなる。事業が伸びている限り、欲しい情報のレイヤーは上がり続けます。
だからこそ、Excelが悪いわけではないのです。Excelが支えている業務のほうが、私たちの想像を遥かに超えるスピードで、たくましく育っているだけなのです。
実際のところ、Excelのままで何の問題もない会社もありますし、逆に「もっと早く仕組み化に踏み切るべきだった」と後悔する会社もあります。
そのため私は、ご相談をいただいても「月に何件以上になったらシステムを入れましょう」という表面的な数字の話はあまりしません。
大切なのは件数ではなく、「今の仕組みが、事業の成長スピードについていけているかどうか」です。
こうした小さな「引っかかり」が見え始めたら、それこそが仕組みを見直すべき絶好のタイミングです。
ここで勘違いしてはならないのは、やはり「Excelをやめること」はゴールではない、ということです。本当に目を向けるべきなのは、システムを導入するもっと手前の領域にあります。
必要な情報を、必要なときに、誰もが迷わず取り出し活用できる状態をつくること。それこそが本来のゴールであるはずです。
これまで様々な業界の業務改善に伴走してきて、実感していることがあります。うまくいくプロジェクトほど、最初からシステムの話をしません。
最初にやるべきは、泥臭く「業務の流れ」を整理することです。誰が何をしていて、情報はどこで生まれ、どこで滞っているのか。その全体像が見えてきて初めて、システムという道具をどう活かすかの作戦会議が始まります。
Excelは、事業の成長を最初に支えてくれるいいツールです。
しかし、事業が続いて、人が増え、情報が増えていくと、Excelだけでは支えきれない場面が必ず来ます。そのとき大事なのは、新しいツールを探すことではありません。まず、自分たちの業務の流れを見直すこと。業務を理解して、取引の流れをデザインする。それが、業務改善の第一歩です。
リベラメンテでは、単なるシステムの導入にとどまらず、業務プロセスの見直しから最適な仕組みづくりまで伴走支援しています。「今の運用に限界を感じ始めている」「どこから手をつければいいか分からない」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。